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Hyperionが消えて、経営企画は「考える覚悟」を失ったのか

Hidero (Henry) SHIMADA
1月4日
読了時間: 4分

昔、Hyperionというデータベースがあった。今やもう20年以上も前の話だ。

企業の経営企画や財務の現場で使われていた、多次元OLAP型のシステムだ。

使いやすかったとは言い難し、IT部門から歓迎されていたとも言えない。

それでも、あのシステムには、今となっては失われてしまった 「考える余白」 が確かにあった。

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経営企画は、正解を出す仕事だったのか?


当時の経営企画の仕事を思い返すと、「正解を出すこと」が最優先だった記憶はあまりない。むしろ、

• この事業は、どこで本当に儲けているのか

• この数字は、どの前提に依存しているのか

• もし前提が崩れたら、何が起きるのか

そうした問いを、

仮説として組み立て、数字に落とし、疑い続ける仕事だった。

正解である必要はなかった。

間違っていてもよかった。

ただし、どう考えたかは常に問われた。

Hyperionは、そのための「武器」だった。

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正しさが先に来る時代


今はどうだろうか。

ERPは高度化し、BIツールは美しくなり、

データはかつてないほど見事に整っている。

その一方で、経営企画の仕事は少しずつ変わった。

• 数字は間違えるな

• 前提は揃えろ

• 説明責任を果たせ

それ自体は正しい。文句のつけようはない。

だが、その結果として、「考える前に、正しさが置かれる」、場面が増えてはいないだろうか。或いは、明らかに正解を持って来いという無理な要求に、無理矢理こたえようとしていないのか?

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リスクを取らない合理性


最近よく聞く判断がある。

「確率論的に見て成功しないなら、やるべきではない」

一見、極めて合理的だ。

だがそれは、本当にリスクを取らないということがリスクをオフセット出来るのか?

確率論は、過去の延長線上でしか語れない。

新しい価値や、顧客の変化、非連続な技術は、

そもそも確率に乗らない。

にもかかわらず、

• 数字で説明できないものは避けられ

• 思考のプロセスは表に出ず

• 結果だけが評価される

そうして、誰も本当の意味でリスクを取りに行かなくなる。勢い組織はリスクを避ける人間ばかりになる。

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思考プロセスが見えなくなった時代


大きな投資判断も、

小さな現場改善も、

今は「結果」だけが共有されがちだ。

そこに至るまで、

• 何を怖いと思ったのか

• どの前提を疑ったのか

• なぜその仮説を選んだのか

そうした 人の思考の痕跡 は、驚くほど残らない。

経営は「正しいが、つまらない」ものになり、

学習もしづらくなる。

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大学院時代に教わった、忘れられない一言


イリノイ大学の大学院時代、香港出身の Benjamin 先生が、こんなことを言った。

「君らはこれから、本格的に中国と付き合うことになる。

だが、よく覚えておけ。


彼らは共産主義だ。


共産主義とは、国家権力で私財を国有化する権限を持っている。

これを Confiscation という。」

続けて、こう言った。


「だから、


取られてもいいと思う技術だけ持っていけ。

絶対に出せないものは、最後まで出すな。」

これは、


国際経営論でも、

地政学の一般論でもない。

現場で生き残るための、覚悟の線引きだったんだと今頃わかる。

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教えを守る、という選択


私はこの教えに従った。

その通りに実行した。

結果として、

大きな事故もなく、

会社は外部ファンドに買収されることもなく、

無事に定年まで勤め上げることができた。


これは武勇伝ではない。


ただ、一線をどこに引くかを、事前に考えていた

というだけの話だ。

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今、こういう話を実話で語れる教授は何人いるのか

ふと考える。

こういうことを、

実体験として語れる教授が、

今のBスクールに何人いるだろうか。

理念は語られる。倫理も、CSRも、グローバル人材もだ。


だが、


いざ修羅場で、何を出し、何を守るのか

その問いに、実話で答えられる教育者は、驚くほど少ない。

まさに


「論語読みの論語知らず」


ではないのかと思ってしまう。

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だから、思考を鍛える場を何処に求めるか?


英語力も重要だ。

分析スキルも必要だ。

だが、それ以前に、

どう考え、どこで線を引くかを鍛える場が、

あまりにも少ない。

ケースを一つ出して、

「これをかじって、キミはどう応えるのか、答えを出してみて。正解でなくていいからさ。」

そう言える場を作ってみたいのだ。

恐らく多くの場合、「ウチは結構です。間に合ってます。」で終わるという結果が、火を見るより明らかだな。

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トライアドが支援したいこと


やりたい経営サポートの仕事とは、

正しい答えを出すことではない。


• 不確実な状況で

• 正解のない問いに向き合い

• どう考え、どこに覚悟の線を引いたのか


その 思考プロセスを可視化し、共有できる組織 を支えることだ。

Hyperionは消えた。今はオラクルに吸収された。


だが、あの時代の「考え方」まで一緒に消える必要はない。

正解を出す前に、まず考える。

そして最後に、守る線を、自分で決める。

その当たり前を、もう一度、経営の真ん中に戻せればいいんだがなあ・・・と思っている。

 
 
 

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